ゆる抜きって何?香川の言葉#331

第331回目のラジオ配信。「ゆる抜き」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

かっけい
かっけい

「ゆる抜き」とは何でしょうか。

香川県では田植えの時期になると、ため池の水を放流する「ゆる抜き」が行われます。今回はゆる抜きという言葉や満濃池や空海の話などを話しました。

内容まとめ
  • ゆる抜きはとは池の水を流すこと
  • 「ゆる」とは池の栓のことで、これを抜くことで水が放流される
  • 満濃池は日本最大級の人工的な池
  • 1200年ほど前に香川生まれのお坊さん、空海によって立派に作り直される
  • 香川は雨の少ないところで、普段は川に水があまり流れていない
  • 香川の人にとって水は貴重
  • ゆる抜きのおかげで香川の田畑は潤っている
  • ゆる抜きは香川の原風景が感じられる言葉

かっけいの円龍寺ラジオ

これは香川県丸亀市にいるお坊さん、私かっけいの音声配信です。

いつもはお寺や仏教の話をしていますが、6月16日の今日は少し趣向を変えて、香川の言葉についてお話していきます。

その言葉は「ゆる抜き」です。

皆さんは「ゆる抜き」と聞いて、何をするのか、ピンときますか?

昨日6月15日は満濃池のゆる抜きがあった日です。満濃池は、田んぼや畑に水を配るために作られた日本最大級の人工的な池です。

香川県の方なら6月15日といえば、ゆる抜きとなんとなく知っているでしょう。きっと昨日はニュースなどで見た方も多いと思います。

でも県外の方は、そもそも「ゆる抜きって何ですか」という感じではないでしょうか。

実は私も子どもの頃は全国共通の言葉だと思っていました。

ところがお参りの時の雑談で、県外の方と話すと、通じない言葉なんだなあと気がつきました。

ゆる抜きとは、池の水を流し始めることです。

香川では田植えの時期になると、ため池の水を放流します。

なぜ「ゆる抜き」というのでしょうか。

ゆる抜きと聞くと、なんだか力を抜いてのんびりやるような響きですよね。

ゆる抜きの「ゆる」は、ゆるいの「ゆる」ではありません。

池の水を出し入れするところの弁、取水設備のことを香川では「ゆる」と呼ぶんですね。

そしてそのゆるを外して、池から水を流し始めることを「ゆる抜き」と言います。

香川では6月ごろは田植えの時期です。この時期にはため池の水を川に流していきます。

中でも有名なのが、日本最大級の池、満濃池にたまった水を流していくゆる抜きです。

満濃池から勢いよく流れ出る水の様子はなかなか壮観です。それが香川の初夏の風物詩として、毎年この6月15日にニュースになっています。

ちなみに、どうしてそんな行事があると思いますか。

それは香川という土地柄に理由があります。

香川は全国でも雨の少ない県です。

しかも山から海までが近く50㎞ほどしかないです。

大きな川が少なく、雨が降ってもあっという間に海へ流れてしまいます。なので香川の川は普段は枯れたように水があまり流れていません。

ですから香川の人は昔から水に苦労してきました。

そこで先人たちはたくさんのため池を作ってくれました。

香川県には一万を超えるため池があると言われています。面積比率だと、香川県は日本一ため池があるところらしいです。

その中でも満濃池がとくに有名です。

満濃池は今からおよそ1300年ほど前に作られたと伝えられています。1200年ほど前には香川県生まれのお坊さん、空海さんによって、立派に作り直されました。

空海とは、四国八十八か所参りのお遍路さんで有名な弘法大師空海さんのことです。

日本の真言宗を開いた方でも有名ですね。

空海といえばお坊さんのイメージが強いと思いますが、実は、満濃池では当時の中国の唐からの技術を活用した土木技術者のような働きをしたわけです。

香川の人にとって水は貴重です。その一助となってくれたのが空海さんです。

香川には空海ゆかりの場所がたくさんあります。お寺だけではありませんよ。

人々の暮らしを支える水にも空海の名前が残っています。例えば、弘法水といわれる井戸や湧き水も各地に残っています。

ところで香川といえば何を思い浮かべますか。

やっぱりうどんでしょうか。

うどんは小麦から作られていますよね。小麦はお米よりも少ない水で作ることができるので、香川県の気候に合っています。

でも実はお米もよく作っています。

田植えの季節になると、ゆる抜きによって流された水が香川の田んぼを潤していきます。

うどんの材料になる小麦はもちろん大事ですが、お米もまた大切な食べ物です。それがゆる抜きによって支えられているんですね。

県外の方は意外に思われるかもしれませんね。

私は子どもの頃から、ゆる抜きという言葉を当たり前のように聞いて育ちました。

でも大人になって県外の方と話すようになると、それが香川独特の文化だと気付きました。

当たり前だと思っていた言葉が、実は狭いエリアだけの言葉だった。そういうことってありますよね。

方言もそうですし、食べ物もそうですし、季節の行事もそうです。

ゆる抜きもその一つなんだと思います。

6月になると満濃池の水が流れ始める。他のため池の水も抜かれ始める。7月には豊稔池のゆる抜きもある。

雨の少ない梅雨でも、川やいでに水が流れ、それを見て田植えの季節を感じる。

水は足りるかなあという心配をしながらも、今年もコメ作りが始まっていく。

そういう香川の暮らしの原風景が、このゆる抜きという言葉に込められていると思います。

今回は仏教やお寺のことではなく、香川の言葉「ゆる抜き」についてお話ししました。

池の水を出し入れする「ゆる」という栓を抜くから「ゆる抜き」です。

県外の方がおられたら、ぜひ「ゆる抜き」という言葉だけでも覚えて帰ってください。

香川では六月になると池の水が流れ始めます。

その水が田んぼへ届き、人々の暮らしを支えています。

ゆる抜きという言葉には、そんな香川ならではの風景が込められているんですね。

今後もまた機会があれば、香川の面白い言葉や文化についてもお話しできればと思っています。

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補足

ゆる抜き

ため池の水を流し始めること

ゆる

ため池の水を出し入れする取水設備や水門のこと

満濃池

香川県まんのう町にある日本最大級の農業用ため池。

約1300年前に作られたとされます。

後に弘法大師空海や西嶋八兵衛によって大改修されました。

香川県のため池や満濃池の歴史については、農林水産省中国四国農政局の資料が分かりやすいのでご覧ください。農林水産省中国四国農政局「香川のため池の歴史」

ちなみに弘法水とは、香川生まれのお坊さん、弘法大師空海さん由来の湧き水や井戸のことです。

弘法水は全国各地に伝わっていますが、その中でも空海さんが生まれたところとされる善通寺に一番近い弘法水は次の場所だと思います。それを紹介したのが下の内容です。

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