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第330回目のラジオ配信。「輪袈裟(わげさ)」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

お坊さんが普段首から掛けている輪っか状の布、「輪袈裟」
法事や法要が始まると外してしまうのに、なぜ普段は身に着けているのでしょうか。
今回は輪袈裟の意味や役割、そしてご門徒さんが身に着ける式章についても話しました。
かっけいの円龍寺ラジオ
これは香川県丸亀市にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいの音声配信です。
前回予告した通り、今回はお坊さんが首から掛けている輪袈裟についてお話しします。
皆さん、お坊さんを見ると首から輪っかのような布を掛けていますよね。
あれが「輪袈裟(わげさ)」です。仏教宗派によって表現が違うかもしれませんが、私の属しているところでは「輪袈裟」と言います。
実は、私は輪袈裟について質問されたことがほとんどありません。
お坊さんが法事法要の時に着ている衣について、「どうしてそんなきれいな服を着ているんですか」とか、「今着ている袈裟はどういう意味があるんですか」と聞かれることはありました。
でも輪袈裟についてはほとんど聞かれたことはないです。
たぶん皆さんの中では、お坊さんといえば首からあの布を掛けている人だ、というぐらい自然な姿になっているんだと思います。普段から首から布をかけているので、疑問にもならないのでしょう。
しかし改めて考えると不思議に感じませんか?
お坊さんは普段あの輪袈裟を掛けていますよね。
でも法事や法要が始まると首から掛けていた輪袈裟を外して、きれいな衣を着て、大きな袈裟を着ます。
普段は掛けているのに、肝心の法事になると外してしまう。
なぜなんでしょうか。
実は輪袈裟というのは、お坊さんが法事や法要で身に着ける袈裟を簡略化したものなんです。
本来の袈裟はとても大きなものです。
しかも立派な刺繍が施されていたり、金糸が使われていたりします。
ですから日常生活には向いていません。
車の運転をしたり、横になったり、食事をしたり、お参り先を何軒も回ったりするのには不便なんですね。
そこで袈裟をシンプルなものにして、普段のお参りでもいつでも身に着けられるようにしたものが輪袈裟というわけです。
ですから輪袈裟は単なる飾り、お坊さんのファッションではありませんよ。
お坊さんとして仏様の前にお参りするための正式なフォーマルな装いなんです。
ご門徒さんのお宅へお参りに行くとき。
お墓へお参りするとき。
あるいは他のお寺へお参りするとき。
そういった仏様参りをするとき、お坊さんは仏様を敬うために、輪袈裟を掛けているんですね。
ここで一つ大切なことがあります。
お坊さんだから首から布をかけているわけではありません。まれにいかにも高価そうな輪袈裟をかけている人を見かけるかもしれませんが、豪華そうな輪袈裟をかけているからといって、立派なお坊さんだというわけでもありません。
輪袈裟は「私は立派な人です。地位の高い人です。」ということをアピールするものではありません。
輪袈裟はお坊さんの正式な装いであり、仏様を敬う姿勢を表すものです。そしてまた、「私は仏様の教えを聞いていく者です」という印なんですね。
実はこうしたものはお坊さんだけのものではありません。
ご門徒の皆さんにも式章というものがあります。
これも首から掛ける輪っか状の布ですね。
お寺で法要があるときに身に着けてお参りされる方もいらっしゃいます。あまり見かけることがないのは残念なことですが、式章を首から掛けるのがご門信徒の皆様の正式なお参りの姿です。
輪袈裟と式章は由来や見た目が少し違います。輪袈裟はお坊さんが法要の時に着る袈裟が元なので、威儀や修多羅といった特別なデザインが施されています。
しかし微妙な違いはあっても、輪袈裟と式章、意味としてはとってもよく似ています。
どちらも仏様を敬い、仏様の教えを聞く姿勢を表すものなんですね。
皆さんはお寺にお参りするとき、念珠・数珠は持って行かれると思います。
でも式章までは持って行かないという方も多いかもしれません。
もちろん式章がなければお参りできないということではありません。強制もされてもいません。
ただ、もしお持ちであるなら、お寺へお参りされるときにはぜひ身に着けていただきたいと思います。
普段着のままお出かけするのと、改まった服を着て出かける時とでは気持ちが違いますよね。
それと同じで、お寺にお参りするときに、式章を掛けることで、今日は仏様のお話を聞かせていただこう。亡き人を偲ばせていただこう。
そんな気持ちになれるんです。
輪袈裟も式章も、掛けたからといって何かが大きく変わるわけではないです。
しかし仏様を拝むときに、念珠を通して手を合わせるように、人は形を通して気持ちを整えることができます。
輪袈裟や式章を掛けることは、そうした仏様を敬う姿勢、亡き人をしのぶ姿勢、仏様の話を聞いていこうという姿勢、そういったことに対して私たちの心を仏様の方へ向けてくれるんですね。
ですので、お坊さんは普段から首に輪袈裟をかけます。皆さまも法事や法要の時に、ぜひ式章をかけていただけたらと思います。
そういう点からいうと、輪袈裟も式章も、仏様のためというより、実はご仏縁を大切にしようとする私たち自身のためにあるのかもしれません。
今回のお話をまとめますね。
お坊さんが首から掛けている布は輪袈裟といいます。
それは単なる飾りではなく、法要の時に身に着ける本来の袈裟をシンプルにして日常のお参りの時に着ることができるようにしたものです。
そして輪袈裟は、お坊さんを立派に見せようとするものではありません。
仏様を敬い、仏様の教えを聞いていこうとする姿勢を表すものです。
またご門徒の皆さんにとっての式章も同じような意味を持っています。
式章をふだんの生活でつける必要はまったくないです。でも仏様参りをするとき、もしお持ちでしたら、ぜひ身に着けてみてください。
念珠と同じように、それが仏様参りのフォーマルな姿であり、仏様のお話を聞く心構えがきっと少しは変わってくると思います。
今回はお坊さんが首から掛けている布、輪袈裟についてお話ししました。
それでは来週もまた、お聞きくださいませ。
輪袈裟に関するQ&A
- Q輪袈裟とは何か?
- A
輪袈裟はお坊さんが首から掛けている輪っか状の法衣です。
本来、法事や法要で身に着ける袈裟をシンプルにしたもので、道中での移動やお墓参りといった日常的な仏事のさいに用いられます。
輪袈裟はお坊さんの地位や権威を示すためのものではなく、仏様を敬い、教えを聞く者であることを表しています。
- Q法事のときにわざわざ輪袈裟を外しているのはなぜなのか?
- A
輪袈裟は本来の袈裟をシンプルにしたものだからです。
厳かな法事や法要ではより正式な衣と袈裟を用いるため、輪袈裟を外して本来の袈裟を身に着けています。
- Q式章(しきしょう)とはなんですか?
- A
式章とは法要や法事のさいに身に着ける首に掛ける布の装いです。お坊さんのする輪袈裟と見た目がよく似ています。
輪袈裟とは由来や形に少し違いがありますが、相手を敬い、お参りする心を表すという意味では共通しています。
輪袈裟はお坊さんのする袈裟が由来です。一方で式章は古い時代、武士や庶民がお祝い事や厳粛な場におもむく時に着た肩衣(かたぎぬ)が由来となっているようです。
- Qお寺へお参りするときには式章をつけないといけないのか?
- A
必ず着けなければならないわけではありません。式章がなくてもお参りできます。
もしお持ちであれば、ぜひ式章を首から掛けてお参りしてみてください。仏様のお話を聞かせていただこうという気持ちを整えるきっかけになると思いますよ。
皆さん、念珠(数珠)は必ずお持ちになりますよね。
念珠は手にかけて合掌するときに用い、式章は首にかけて仏様を敬う姿勢を表す装いです。どちらも仏様とのご縁を大切にするためのものです。
念珠と式章、これが仏様参りのフォーマルな装いです。
- Q輪袈裟を忘れてお参りに行ったことはありますか?
- A

もちろんあります。お坊さんも人間なので、ついうっかり忘れ物をすることがあります。
ただ、私はお参りに使う車の中に予備の輪袈裟や念珠を入れているので、今のところ大きな失敗にはなっていません。
それだけ輪袈裟や念珠はお坊さんがお参りするときの大切な装いなんですね。


